車内で医療機器が使用できるように、AC100V電源を設置しました。
もちろんクリーンな正弦波の高性能電源です。

先日、小さなお客様の退院のお手伝いをしました。
小さな小さなかわいい赤ちゃん。
ベビーカーに乗せられて、人工呼吸器を付けていました。
お父さんとお母さんと一緒にご乗車です。

ご予約のときに、お母さんからAC100V電源ありますか?と質問がありました。
その時当社の車両は電源を装備していませでしたので、ありませんとお答えしましたが、それでもいいということでご予約いただきました。

福祉タクシーをやっていて、いままでも人工呼吸器を装着した方のお手伝いをしたことがあります。
ポータブルの人工呼吸器はバッテリーを内臓していますので、数時間なら電源がなくても稼働します。
しかし、もしバッテリーが切れたらと考えると、バックアップ電源があったほうがいいに決まっています。
今までにご利用いただいた方は、やさしく安全に運んでほしいというほうを優先して、電源がなくても当社を選んでくださったのでしょう。
常々電源あったらなぁと思いながら、もしもの時は最寄りの家に電源を貸してもらうようにお願いする心づもりでおりました。

いままで電源を装備していなかった理由は2つあります。
一つは、安易に医療機器を使えると宣伝して、もし故障でもしたら、責任を取らなければならないからです。
万一の保険には加入しておりますが、命にかかわる問題はお金で解決できる問題ではなく、何かあったら取り返しがつきません。
当社はしっかり整備点検を行っていますが、車が絶対に故障しないようにすることは誰にもできません。
そこまでの責任が負えるかどうか、とても悩んでいました。
もう一つは、事業としての採算性の問題です。
医療機器に使えるインバーター(車の電気DC12Vをコンセントと同じ電気AC100Vに変換する機械)はとても高価です。
使用頻度を考えると購入金額の回収はできません。
今まで電源がなくても何とかなってきたので、なかなか導入に踏み切れませんでした。

でも、がんばっている赤ちゃんを見ていたら、もっと何かできないかなという思いがこみ上げてきました。
ご両親にも少しでも安心してもらいたいと思いました。
そのほかの電源を使いながら命をつないでいる方にも、もっと安心を。
その時、少なくとも採算性という理由は、私の中で消えました。

そこで、医療機器にも安心な高品質な正弦波インバーターを導入することにしました。
実は、導入するならこれしかないという機器を前々から選定済みではありました。
それが今回取り付けたCotek社製のSK1500-112というインバーターです。
http://www.onegain.co.jp/cotek/index.html
日本の総代理店はワンゲイン株式会社さんです。


クリーンな電気を出力する、定評のある高性能な機械です。
ちなみに、医療機器などは、正弦波の交流電源でなくては正常に稼働しません。
交流電源は、電気が波を打っています。
医療機器や精密機械は、規則正しく滑らかに波打っている正弦波電源であることが前提で設計されています。
ホームセンターなどで売っている安いインバーターは波形がカクカクぐちゃぐちゃで、医療機器や精密機器には使えません。

当社の車両ヴェルファイアの発電機は150Aの容量があるので、計算上は1800W程度まで出せます。
家庭用の100Vのコンセントにつなぐ機器は1500Wまでが基本なので、1500Wが最適と判断しました。
医療機器などはもっとずっと少ない消費電力なので、主目的からするとかなりのオーバースペックですが、余裕はあったほうがいいと考えました。

設置作業の模様です。
設置は自分の手で納得のいく作業を。何かあったときに人のせいにしたくありませんからね。
(もちろん電気を熟知した自動車整備士のサポートを受けながらやってます。)


使用するケーブルは、インバーターのメーカーが推奨する太さ38sqの極太ケーブルです。
端子をかしめる工具もデカい!ちゃんとJIS規格ものです。

配線中。
プラスはエンジンルームのバッテリー端子から室内に直接配線をもってきます。マイナスはボディに。
このように接続することで、車のコンピューターが電源の使用を検知して適切な発電を行うようになります。
発電機から直接配線すると多少効率は良いようですが、コンピューターが電圧の制御ができなくて、いろいろ悪影響が出ます。

取り外し可能なステーも自作。
使う時はコンソールボックス上に鎮座させます。

設置完了!
テストしてみました。ちゃんと1200wのドライヤーも使えますね!
家庭用でこれ以上電気を食う機械は、電子レンジとエアコンくらいでしょうか。
福祉タクシーではここまで大電流を使うことはないですが、もし災害でも起こったときには電源車としても活躍してくれることでしょう。
毎日の点検項目が増えましたが、しっかりやっていこうと思います。
今回の設置作業で、自動車の電気の知識がかなり増えていい経験になりました。

これで人工呼吸器の充電や、電源が必要な点滴ポンプ、酸素吸入器なども使えるようになりました!
ぜひお手持ちの機器でご利用ください。
もちろん電源のご利用は無料です。
(※当社による医療機器本体の提供は、法規制によりできません。ご了承ください。)